水耕栽培入門(理論編)

始めにお断りします。私は農学系では無く、長年企業で生産技術関係に従事した技術者です。しかし「なぜ?」を繰り返し真因に到達する能力には自信が有ります。
以下は水耕栽培をはじめて3年間、「なぜ?」を繰り返し得られた結論です。
専門の方、あるいは先輩の皆様に笑われる内容かも判りませんが水耕栽培装置製作前にご一読下されば理解が深まるとおもいます。

水耕栽培は土耕栽培と比べ、非常にシンプルと思います。

土耕の場合は、土の中の微生物とその作用・害虫・土質(科学的・物理的性格)・土中の残留物と植物の相性(いわゆる連作障害等)等、植物の成育を左右する変動要因が多すぎます。そこで必要なのは、長年の経験、勘といった物です。
私の様な先の無いエンジニヤーには悔しいファクターです。勿論其々に因果関係が有ると思いますが、趣味の世界では煩わしすぎます。
その点、水耕栽培の変動要因は土耕に対してシンプルだと思います

水耕栽培の変動因子は
1)水
2)肥料
3)酸素
4)根と養液接触部のリフレッシュ化
5)植物のストレス。

この5項目をクリヤーできれば、土耕以上のOUT・PUTが可能というのが、わずか3年の水耕栽培未熟者があえて公言する結論です。以下に説明していきます。

1)水について。
水耕栽培は当然、水を使います。特別な水で無く普通の水道水で充分です。但し、水道水の塩素は植物にとって有害と言われています。塩素を抜く為にエヤーバブリングを1日行う事が必要です。これは諸先輩のブログにも記入されています。但しカルキ抜きを今年使用しましたが使い方が悪いのか、養液が変色、肥料?の凝結が見られ上手く行きませんでした。私はもっぱら風呂の残り湯を使っています。雑菌だらけの様な気がしますがすこぶる好調です。

2)肥料について
私は最初からプロ用の大塚アミノ1号、2号を組み合わせて使っています。同じ配管系列に同じ濃度の肥料を流しキューリ・ミニカボチャ・ゴーヤを育てています。肥料については濃度さえ注意すれば大丈夫です。

3)酸素
 植物の根は殆どが柔細胞で細胞間に隙間がありその隙間が葉の気孔まで繋がっています。土耕栽培の場合、土粒粒子の隙間にこの細胞の隙間が直接つながり空気中の酸素を直接吸い込む訳です。
水耕栽培の場合は根が常時水に接している状態になり水中から直接酸素を取ることになりますが、水中の酸素の拡散速度は遅く、根表面の酸素濃度は直ぐに低下して、酸欠状態になります。その時、根は細胞の隙間を更に広げて酸素を吸収しやすい体制を取ります。いわゆる水耕栽培に適した根に変貌する訳ですが、それでも酸素吸収できない場合、細胞壊死が始まり枯れてしまいます。
従い水中に酸素を充分に供給し続ける事が大事です。水耕栽培装置を計画する時には水中に酸素を供給する仕組みを組み込む事が大事です。

①エヤーバブリングによる方法
一番ポピュラーで確実な方法です。泡をできるだけ細かくして広く供給する必要があります。細かい気泡を作るエヤーストーンが中々見つかりません。

②水面に勢い良く水を流し込みその時に空気を巻き込む方法。

③ベンチュリー効果を利用して水に空気を巻き込む方法
配管の一部を狭め、そこに小さな穴を開け気圧差で空気を水中に巻き込む方法です。

④汽水域(湿度100%の空間)に根を這わす方法
植物の根は湿度100%の空間で一番酸素吸収が良いと言われています。

①~④の酸素供給の仕組みの適用を我が家の栽培装置で分類してみると
*ポールプランターは④を狙っています。
マイクロファイバーの表面を防根・透水シートでカバーして根をその上に這わすことにより、水中でもなく空中でもない所に根を張る所がみそです。
*水平パイププランターは②、戻り排水がタンクに帰る時、空気を巻き込んでいます。
*浮き根+バブリング方式は①と④
*(スーパー)ホームハイポニカもどきは給水口にエヤーストーンを入れていますので①と②、排水口部で②の効果 
*(参考)市販のホームハイポニカは給水口に③を狙った工夫をしています。排水口には②の効果

更に大事な事は水温です。水温が上昇すると酸素許容溶解濃度が低下します。つまり水中に酸素が溶解出来ない状態になります。いくら酸素を取り入れる工夫をしても水中に溶け込まなくなると植物は窒息します。夏場の水温上昇をいかに防ぐかが重要ポイントです。

4)根と養液接触部のリフレッシュ化
根が養分を吸収するのは主に浸透圧差(濃い方から薄い方に移動する)
根の細胞内部の方が養液より濃度が濃く養液から水と養分を吸収続けますが、当然ながら養分より水の方が吸収が早いので、細胞表面には高濃度の養液層が出来ますので、しだいに養液の吸収が出来ない状態になります。この為、根表面に水の流れを作りこの高濃度養液層を取り除く必要があります。
栽培装置では
水平パイププランター、(スーパー)ホームハイポニカもどきは水中ポンプで水の流れを作り根の表面を常にリフレッシュしています。
浮き根+バブリング方式はプランター底面にエヤーストーンを置き、酸素供給と同時に上昇する気泡の作用でプランター内の養液を撹拌して、根近辺の養液のリフレッシユ効果も狙っています。

5)植物のストレス

①根を動かされるストレス
生物に共通ですがストレスは成長に良くない。栽培槽関連で植物にストレスを与える作用は根を動かす事です。根の表面をリフレッユする事は必須の作用ですが、根を揺らさずに穏やか流れを作る事が重要です。水平パイププランターやホームハイポニカもどきをの内部を覗いてみると水は一定の流れで根の動きは殆ど見られません、この様な環境作りが水耕栽培成功に秘訣です。
エヤーバブリングの場合、気泡の上昇の勢いでどうしても根が揺り動かされ、植物にストレスを与えてしまいます。エヤーバブリングの場合、連続バブリングよりインターバル運転の方が良いという大学の研究論文を見たことが有ります。
我が家のエヤーバブリングは水平パイププランターに連動し、夏場日中15分運転15分休止、夜15分運転30分休止のサイクル運転をしています。

②養液の増減によるストレス
水耕栽培用の根に変貌した植物は養液の変動にストレスを生じます。水位を一定に保つ工夫が必要です。私が推奨するミニフロート式自動給水装置は電気を使わず、常に水位を一定に保つ道具です。これを使えば、植物はストレスを感じず、伸び伸びと成長します。
植物の収穫最盛期には驚くほど養液を消費します。水補給を怠ると忽ち植物にストレスを与えて成育に影響しますのでぜひ導入してください。

トマトは逆に実の収穫期にストレスを与えた方が実の甘味が増すと言います。ミニフロート式自動給水装置の位置を変えれば簡単に水位調整出来ます。